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銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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(銀土)

ミワ氏に捧げます!遅くなってほんとにすみません。

銀土前提の幕土切なめ…ということだったんですが、お待たせした上にまるでリクエストに添えていないという…。

この話を書くにあたって、いつになく銀さんや土方さんの性格を考えることになり

それが考えるほどわかんなくなってしまって、色んなパターンを作りました。

その中でも二人がいちばんらぶらぶで、ハッピーエンドなものが選ばれた感じですw

結局、こんなできになってしまいましたが、少しでも楽しんでいただければと思います。

題名はばんぷの同名の曲からつけました。


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「……土方。」

 

                                     embrace

 

深夜、万事屋の呼び鈴が鳴った。

銀時は、一人っきりの部屋の中に響くその音で目を覚ました。

横になったまま、数度まばたきした。

寝起きにしてはおかしい程はっきりした意識だった。

二度寝もできそうにない。見事に起こされたもんだ。

神楽も新八も、定春もいない。

玄関の、扉の向こう側で消え入りそうな気配だけが身じろぎをする。

呼び鈴の余韻もすでに無く、布団を退ける音が異様に大きく聞こえた。

「万事屋ならもう寝てますけど。」

板張りの上に立つと、そこからどんどん奪われていく体温がわかる。

すぐに足の指はかじかんで、動かしにくくなった。

じっと待っても返ってこない答えに、徐々に苛立ちがつのる。

こんな時間にわざわざ来ておいてだんまりって、何がしたいんだ。

非常識きわまりない。

文句だけでも言ってやろうと引き戸を開けた。

知り合いだろうがなんだろうが、問答無用。半殺しにしてやる気でいた。

「……土方。」

「……。」

そこには隊服を着た土方が、煙草を噛みしめて立っていた。合ったと思った視線は一瞬で逸らされた。

スカーフはしていない、ボタンのいくつか外れたシャツから白い胸元がのぞく。

「とりあえず、入れよ。」

そこに浮かんだ見覚えの無い赤い痕には気付かないふりで手を取ろうとした。

その手はふるえていた。

「……入れ。」

今は誰もいねぇから。

「…わりぃな、邪魔する。」

土方は、目だけで笑って俺の脇を通り抜けた。

伸ばした手をごまかすように俺は、頭をかきながら戸を閉めて振り返った。

部屋着の甚平がどうも湿っぽい。

「急にどうしたんだよ。」

土方がソファに座ったのを確認してから台所に入った。

粉茶を湯呑みにふり入れながら聞く。

やはり答えはない。

「仕事は?」

「…今日は今、終わって、それで来たんだ。明日は休み。」

「ふーん。」

いつもなら遠回しなお誘いかと浮かれるところだが。

なんて考えながら、湯呑みを二つテーブルに置いて土方の向かいに座った。

「よかったな。一日休みなんて久しぶりじゃねぇか?」

「まぁな。」

いつの間に消したのか、土方は煙草を吸っていない。

膝の上で組まれた両手。

シャツの袖口の手首にも、擦り傷の様な痕があった。手首のまわりを一周しているだろう痕が。

「連絡も無しに来るなんざ、お前らしくもねぇが。」

「…すまねぇ、話があってな。」

いい話じゃぁ、ないようだ。見たところ。

「……万事屋。」

「うん?」

「俺は……。」

言い淀んで土方は、傷の上から手首を握り締めた。俺は。

「抱かれたんだ、お前以外の奴に。」

「……。」

抱かれた。おかしなことに銀時は、そう聞いた瞬間ふきだしそうになった。

なんでだろう。

ぐっとこらえて、そのせいで視界が少し曇った。

「…浮気かぁ?」

「そうなるのか、やっぱり?」

土方は湯呑みからあがる湯気を眺めながらちょっと首をかしげた。

「…何があったのか、話してくれんだろ?」

ちらっと銀時を見てから、あぁと言ってうなずいた。

「言い訳じみて聴こえるかもしれねぇが。」

「俺が話せって言ったんだ。」

これからお前がどうするつもりなのか知らねぇが、聞いておきたい。

「……。」

そっと息を吐いてから、土方は銀時と目を合わせた。

「うちの隊士が幕府高官の秘書を斬ったんだ。」

俺が焚き付けたようなもんでな、そのちょっと前にそいつが親の敵がいるって泣きついてきて。

俺は、真選組隊士にそれを許すことはできねぇと言った。

「真選組隊士には、だぜ。な、焚き付けたようなもんだろ?」

銀時はそれには反応せず、続きを促した。それで?

「そいつはすぐ真選組を辞めて。で、有言実行。よくやったって褒めてやりてぇくらいだ。」

どうせなら誰にもわからねぇように終わらせて欲しかったが。

「バレたのか。」

「…あぁ。」

苦汁飲み込んだみたいな顔で言う。

「どっから知れたのか、あいつがヘマぁやらかしたのか。」

わからなかったが、そうこうしてる内に殺された秘書の上司から呼び出しがあってな。

「こっちの要求をのめばこの事は不問に処すっつーんだ。」

「うわ、悪趣味。」

「だよな。」

自嘲気味に笑う土方を見る。

そういえば、俺も他人のことは言えないんだった。

銀時は腕を組んであごをしゃくった。

「なんか、もう話の流れはよめちゃったけど?ここは最後まで聞くべきだよな。」

「お前の思うとおりだよ、ちくしょう。」

「お前らしくもねぇな、あっさり自分を投げ出してきたわけぇ?」

「うるせぇ。今回はまったく、俺の不覚だよ。」

あぁ、お前に会わなきゃあんな醜態さらさずにすんだのにな、お前のせいで恥の上乗せだ。

不貞腐れた様に言って、土方は煙草を取り出した。

「わりぃ、辛抱ならん。」

「いいよ、こっちは慣れたもんです。」

土方はまた一瞬、顔を歪めた。

それだけの間、たしかにずっと一緒に居たわけではないといえ、想いを繋げてきたんだ。

あとついでに身体も。

なるほどそのせいで醜態をさらしたなんて言うのか。それは申し訳ない。

しかしその相手を今、土方は引き離そうとしている。

しかも別に、その相手を嫌いになったわけじゃねぇ。

どころか、と銀時は自分に都合の良いだろうことを考えた。

十分、気持ちはこっちに残ってる。

「銀時。」

土方は、まだ長い煙草を携帯灰皿に突っ込んだ。

うん、と答えながらこいつは馬鹿だと思った。

それとも俺をなめてんのかな。

「銀時。」

「うん。」

もう止めよう、と土方は言った。予想通りだった。

「もう、止めよう。」

「…別れようって言わねぇの?」

「そんなガラか?」

いんや。違うな。

これも予想できた答えだった。

一人で頷く。

土方は、それを横目に冷めたお茶をぐいっとあおった。

「納得いただけた所で失礼するぜ。時間もねぇし。できることなら、生涯もう顔を合わせずに済ませてぇな。」

「顔も合わさずに?」

「……おぅ。」

にやりと、男らしく笑って席を立とうとした。

その手を、銀時はテーブルを乗り越えて掴んだ。

「待てよ。」

「…おい、離せ。」

わかるだろ、帰らせてくれ。

「…やだって言ったら?」

立ち上がった土方の顔を見上げる。

「泣くぞ。」

笑顔のままの土方が、言った。

「…泣くの、お前?」

「帰りてぇもん。断られたら泣いちまうなぁ。」

「じゃあ、やだ。」

きっぱりと、答えてじっと土方の目を見ていたら、確かにそれがどんどんと潤んできて、銀時は驚いた。

「…泣くの、お前?」

尋ねたのには黙ったまま、ぼろり、涙を溢した。

テーブルの上で膝をついて、銀時は土方の頬につたう涙をそっとぬぐった。

「……すまねぇ。」

「いえいえ、どういたしまして?」

「ちげぇよ。」

そっちじゃねぇ。

「…じゃあ、どっち?」

土方は頬に触れる銀時の手を払いのけた。

「俺がこういう人間だから。」

「知ってるよ、それくらい。」

こりずにまた、手を伸ばす。

「知ってる気になってるだけじゃねぇのか?」

土方は泣きながら話していた。

それでもその声は普段と何も変わらなかった。

「俺は、お前みてぇなのがいても真選組がからんでくりゃあ、娼婦の真似事だって平気でやる。」

お前は何も知らねぇ。

「俺は、平気でお前を裏切るんだぞ?」

後から後から溢れる涙はまるで、無いかの様に振る舞って、いつも通りの声が言う。

こうやって、隠すことばかり達者になって。

「だから、もう止めよう。」

ずっと思ってた。このままじゃいけねぇって。

「……。」

銀時はまた、さっきと同じことを考えていた。

こいつは馬鹿なのか、俺をなめてるのかどっちだ?

「そんなん、もとより覚悟の上だっつーの。」

「は?」

「お前が何と言おうがな、俺が全部わかって、全部わかってそれでお前を選んだってこたぁ変わらねぇって言ってんだよ。」

「……。」

「まぁ、選んだってより結局、お前しかいなかったっつーのが正しいのかもしれねぇが。」

俺、今かなり恥ずかしいこと言ってるぞ?

「ちょっときもい位じゃね?」

「あほか…。」

ちょっとどころの話じゃねぇよ。

唇の端、つり上げてみせた土方に、銀時も笑い返してみた。

ごしと手の甲でひとぬぐいして、なのにまだ涙も止まらないようだけど。

睫毛の先をきらきら光らせて、赤く染まった目元が痛々しい。

とか、かわいそうだとか言ったらこいつはきっと怒りだすだろうな。

そう思ってやっぱり笑い返すしかない。

黙って笑い返すのだってけっこう大変なのだから、土方にもここは汲んで欲しい。

それは、土方だって同じはずなのだから。

こうして考えてみればたしかにもともと無理のある関係なのかもしれない。

それでも俺はお前を選び、お前は俺を選んだ。

「悪いな、土方。」

俺はこれでも、もしお前が別れ話を切り出したらさらっと身をひいてやろうなんて思ってたんだぜ。

不可能だってわかったけどな。

「土方、なぁ。」

土方、土方、土方。

両手を掴んで引き下ろす。

ソファに無理矢理、座らせて瞳の色をうかがった。

「銀時。」

土方の、開いた瞳孔に銀髪が光る。

なるべくまばたきしないように踏ん張ってそれを睨み続けた。

そうすると、土方の眉がきゅっと寄っていくのがわかった。

「土方、愛してるよ。」

お前の全部を。

「だから、そんな理由で離れていかねぇで。お前に誰か好きな奴ができた時は、そん時は俺、きっちり、すっぱり、諦めるって誓うから。」

お願い。

まっすぐ、見つめ合って反応を待つ。

「……っ、ばかやろー!」

土方は、おし殺した声で言った。

「俺がこれ、言うのにお前、どんだけきつい思いしたと思ってんだばかやろー!」

意味、なくなっちまったじゃねぇか。

ぎりりとこんな時まで好戦的に睨み返す土方を、銀時は笑って引き寄せた。

「ごめん。」

「謝んじゃねぇ…っ。」

どうしていいかわからなくなる。

「いいよ、今は。わからないままで。」

ちらっと一瞬、唇を触れ合わせる。

「お前はそうして、守るべきものを守ってる。だから俺が、そんなお前を守ってやるよって、なぁ。」

今だけ、思いあがらせて。

「……。」

土方はゆっくりと目を閉じて、銀時の喉元に額を押しあてた。

それだけで銀時は、土方の答えがわかったような気がした。

抱きしめた体温が、土方にも伝わっているといい。




・・・



おわり



・・・











土方さん泣かせてしまった…。


こうして翌日にはまたいつもの二人。



・・・



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