銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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(銀土)
今更の、銀誕!あれ?愛に創作力が追いつかなかったんです…。
W先生設定で坂田先生には奥さんがいます。
奥さんが冒頭でがっつりでてくるので注意です。
やたらと10月10日を強調する構成は遅れることを予期していたのでしょうか…?
こんこんこん、遠慮がちに書斎の扉がノックされた。
採点中のプリントから視線を移して、机上のデジタル時計を見た。
10月10日
0時2分。
こんな時間に珍しい。そう思いながらも坂田は、起きてるよと扉の向こうに声をかけた。細く開いた扉から、妻が顔をのぞかせる。
「お仕事中?」
「あぁ、まぁ。どうした?」
回転椅子の向きを変えて、正面から向き合うと妻も部屋の中へ入ってきた。
「あの、銀。」
「なに?」
華奢な手がきつい癖のついた坂田の髪に差し込まれて、するりと後ろへなでつけていく。
なぜかどこか申し訳なさそうな、それでも暖かいこの人の笑顔が好きだ。
「お誕生日おめでとう。」
そう、言われて思い出した。へぇ、誕生日か。
「ありがとう。」
答えてそっと妻を引き寄せる。今日が、俺の生まれた日。
耳元で優しい声が言う。
「今夜はご馳走を作って待ってるわ。だからなるだけ早く、帰ってきて。」
「うん、わかった。」
妻が笑うのに合わせて吐き出される息で首筋がくすぐったい。
「ケーキも手作りするから、楽しみにしといて。」
「おい、楽しみにできるようなもん作れよ。」
坂田も笑った。
そうして体を離し、またその、愛すべき笑顔と見つめあう。
「頑張るわ。まぁ、その時までのお楽しみということで。」
おやすみなさい、お仕事頑張って。
最後に軽いキスをして、妻は部屋を出て行った。
柔らかい残り香が書斎を窓枠の隙間まで満たしている。
結婚してもう二年になるが、彼女はまだ色褪せる気配もない。
幸せだと思う。愛しているのだと、思う。
なのに、思った端から坂田の目は携帯を気にし始める。
あいつは、知っているだろうか。
何年も何年も前のこの日、俺が生まれたことを。
お前に出会うための一歩を踏み出したことを。
真っ黒い前髪の下から、想像のあいつは坂田を睨み付けて煙草をくわえた唇、知るかそんなもんと吐き捨てる。
「ったく…。」
鳴りも震えも光りもしない携帯をしばらく眺めていた。
この気持ちも愛なんだろうか?
思わずついたため息が、室内にひどく悩ましげに響いたので我にかえった。
アオいこと考えてんじゃねぇよ、ちくしょう。
携帯から引き剥がした視線をまたプリントに落とす。
ぱたん。
日付の変わる前から何度も開閉を繰り返して土方は、また開いた携帯をまた閉じた。
「馬鹿らし…。」
サブウィンドウの中に時刻が光る。
10月10日
0時17分。
昨日、総悟に言われたことを思い出す。ねぇ、土方さん。
明日は旦那の誕生日なんですってよと総悟はにやにや笑いながら言った。
「だ、か、ら、何だよ!」
総悟のことだからいつもの悪ふざけ、どうせ嘘だろ。
あいつの前で恥かいてこいってとこだろ(今日はどこでカメラまわってるかわかんねぇから気をつけねぇと)。
だが本当だろうが嘘だろうがそんなに関係はない、残念だったな。
だって俺とあいつは誕生日を祝い合うような仲じゃねぇ。ねぇ、はずなんだ。
「なのにじゃぁ、うじうじ女々しいこの状況は一体何なんだって話…。」
机に突っ伏すはずみで盛大なため息が出た。はああああぁぁぁぁ。
「……。」
無意識のうちに携帯を見ている。
誕生日か……。
何年も何年も前のこの日、あいつがこの世に生まれ出てきたかもしれないことを想像してみる。
きっとその時はまだおかしな卵焼きの味も知らなくて、変な色のネクタイも銀色の指輪もしていない。
まっさらな銀八を想像してみる。
あいつはいつも、セックスの前に指輪を外した。
だから俺は、あいつの指輪をしていない手を思い浮かべるとそれだけで腰からしびれたようになる。息が詰まる。
気付いたらいつもあいつを考えるようになっていて、しかたなく手を伸ばして。
予想外に受け入れられてまい上って、最近ではもう自己嫌悪の方が強い。
それなのに今でもぬけ出せずにいる自分。
どころかどんどん、深みにはまって沈んでいく感覚。
あいつが幸せならそれでいい、と思えない醜い感情。
形のない、おぼろげな影がちらつく会瀬。
そういうもの全部が俺の指先をひりつかせる。
お前、今日が誕生日って本当か?尋ねたところで知ってどうすると言われたらそれまでだ。
実際、そうしてやってきたのだし。
祝わせてくれと厚かましく言うのか、まさか。
その資格があるのか、まさか。
携帯を取って、開いて、目覚まし時計を設定して閉じる。
サブディスプレイで着信がないことを確認する。
小さな四角い窓の中でその光が消えるまでじっと見ている。
「あ…。」
そうだ、同じ職場で、会わないはずがないんだ。当たり前だ。
「おう……。」
朝の職員室で、顔をあわせた土方と銀八の間には、気まずい沈黙がおりた。
こんな場面でどうすればいいかなんて考えてきていない。
二人は同時に互いに背を向けかけた。
そこで立ち止まって考える。それにしても。
この雰囲気はどうも、総悟の言ったことは本当らしいなと土方は思った。
どうしたもんか、何か言うべきか?
この雰囲気はどうも、こいつは知ってて何も言わないんだなと坂田は思った。
どうしたもんか、こいつのことだから素直に祝ってなんてくれないだろうが。や、まぁ、そう祝って欲しいわけでもないけど?
でもやっぱり、欲しいという、欲張り。それは、とりつくろわなければいけないものか。
いけないものだろうなぁ…と、脳内会議は一応の決着をみせた。
この動揺も、とりつくろわなければ。
「えー、おはようございます?」
「なんで疑問形だよ。」
土方は、煙草を吸いたい。さっさとこの会話をきりあげて机について、仕事をしよう。
忘れよう。
こんな風に迷う気なんてなかった。俺は切り捨てられるべき人間で、迷う素振りなんて見せられない。
誕生日なんて、知らなくてよかった。知らない方が。
「それじゃ、今日もお仕事頑張りましょう。では」
「え…あ、はい。」
坂田は少し面食らったような表情で、頷いた。
それからその場を立ち去ろうとした土方を呼び止めた。思わず。脳内会議場が議員の大ブーイングで満ちる。
おい、ふざけんな。逃げようとすんな。
「あれ…、その!」
なんだ、と土方はいつもの仏頂面で答えた。呼びとめられた。何が言いたい。
「なんか、言いたいことあんのか。」
「……。」
意を決したように。坂田がちょっと黙る。
「今日、俺、誕生日。」
「……。」
「言うこと、あるんじゃないですか。」
返す言葉をしばらく探す。
おい、その実験前のモルモットみたいな瞳はなんだ。言えってか。おめでとう?おめでとう?
これは、そうだ。社会人の礼儀として。
言う。
「おめでとう。」
言った瞬間、みるみる坂田の笑顔に光が広がっていくので、土方は目をそらした。照れ隠し。なんだこれ。
「言わせといてなんだよそれ。」
え、と坂田が言った。うわ、まぶしいと土方は思った。直視なんてとてもじゃないが無理だ。
「え、ありがとう…。」
あぁ、声にも光がまとわりついている。
こんなんじゃ、礼儀だとかそんな言い訳できない。
朝から大の大人が二人、ぷしゅう、うつむいて始まる。
10月10日
ほんのちょっとの間だけ、恋人でいるの許して下さい。
・・・
言い訳
・・・
書きだしたのは9月末だったんです。本当です。
やめようかとも思ったんですけどせっかくなんで書きあげてみました。
なんで不倫ネタなんて書こうと思ったんだろう。
土方さんがアタックして、セックスだけの関係で、銀さんは土方さんに対して愛着しかないと思ってたんだけど、そんなことなかった、っていう話でした。
そういう話だったはず…。
とにもかくにも銀さん、大好きや!おめでとう!!ございました!!!
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