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(銀→土)
題名は同じですが、他の『青春ボーイズ』とは別物です。
同級生パロ=青春ボーイズというかんじでとらえていただければありがたいです(-_-;)実情はネーミングセンスのなさからの逃げです…。
バレンタインから始まる銀土、愛のプレリュードw
作ったのは、いいんだ。
青春ボーイズV
つれないあの子に密かに密かに思いをよせて早2年がたとうというところ。
今年もこの日がやってきた。
バレンタインデーという、一大決戦の日が。
俺がこの戦いに挑むのはこれが2回目だが、前回は完璧な敗北だった。
その戦いとは一体なんなのか。
何をもって勝利とするのか?
答えは簡単だ。
あまりにも簡単だ。
ある男に小さな箱をひとつ渡せれば俺の勝ち。
できなければ負けなのだ。
しかしこれがなかなか難しい。
問題はその男が誰か、ということであり、箱の中身が何か、ということである。
俺は土方にチョコレートを渡さなければならないのだ!
この日の内に。
チョコレートを作るなんてのは、俺の手にかかればなんということもない。
お望みとあらばチョコケーキだってブラウニーだって、もうレシピも見ずに作れる。
俺様に任せとけってなもんだ。
…それが渡せない。
甘いものが苦手なあいつのために、去年は砂糖控えめ、チョコ風味のカップケーキをたくさん作った。
そして、高杉に全部食べられた。
涙が出た。
でも渡せずにいた俺も悪い。
今年は昨日1日かけてチョコ味のチーズケーキを作った。
試作に試作を重ねた末、やっと完成した力作だ。
これをゴミにすることになるのか、自分で食うことになるのか、それとも高杉の胃袋に入れることになるのか。
勝負がつくまでそれはわからない。
そして勝負をつけられるのは俺だけだ。
ちなみに土方からのチョコレートを期待したことはない。
くれるはずもない。
当たり前だ。
そもそもおかしいのは俺なんだ。
俺がこんなことを望んでんのがおかしいんだ。
だって俺から、いっつもいがみあってるような男からチョコレートなんてもらって土方が喜ぶわけないし。
いつも俺はそこまで思いいたって頭をかかえる。
喜ぶわけない。
ため息をつく。
どうすればいいんだ。
難癖つけていつものようにからむのでいいならいくらでもやってやる。
でもそれじゃ意味がない。
「ねぇんだよ…。」
おさまりの悪い髪をぐしぐしかき混ぜて時計を見た。
遅刻確定だ。
うぅっ、このままここにいたい。
バレンタインなんて知らないふりでいたい。
でも俺は。
「あーーーっ!!」
土方、好きだ。
好きなんだ。
男同士とか、そういうのまとめて無視できる位、お前のことが好きなんだ。
「受け取って…。」
受け取ってくれ。
鞄に、鍵と携帯、そして青い包装紙で包んだ箱をつっこんで部屋をとびだした。
鍵が壊れた自転車をちょっと借りて、そのペダルをぐいぐい踏み込んで。
学校が見えたところで放り出した。
ふと気付いて、倒れた自転車を道の端に立ててから歩く。
校門でちょっと足を止めて、そびえ立つ学校を見上げる。
教室に行くのはやめておこうと決めた。
別に怖じ気づいたわけじゃないけど。
スリッパに履き替えて階段を登りながら、携帯を取り出した。
だんだん早くなってきた鼓動を押さえつけて文字をうちこんでいった。
「今、教室?」
スリッパがぱたこんぱたこんいっているのを数えながら返事を待つ。
手の中で携帯が震える。
「そうだ。お前は今日サボりか。」
「いや、いちよう学校。高杉いる?」
階段登りきって、そこにある扉を開ける。
壊れた鍵は、大分前の俺の仕業だ。
「珍しくいる。ずっと寝てるが。」
「そか。授業は?」
「さっき3限終わったとこ。」
じゃあちょっと出てこない?
そう送って、グレーの屋上を見渡した。
「だめだ。もうすぐ授業始まる。」
透ける青い空と、痛い位のコントラストのフェンス。
「なんだよつれねーな。」
「なにがつれねーだ。お前が無茶いってんだよ。」
無茶ねぇ、確かにそうかもしれない。
バレンタインに男からのチョコ受け取れ、っていう無茶。
しかも女共が友チョコ~とか言って騒いでるような生温いもんじゃない。
正真正銘、ド直球の大本命チョコだ。
自分で考えてみて笑えてきた。
そこをこらえて返信。
「お前そんな真面目に授業でてる奴だったっけ?」
「うるせー!!」
読んだ、というよりその文字が目に入った瞬間ふいた。
そう言い放つ土方の声を思い出すと、まるで青空が言ったみたいに見えた。
あぁ、結局笑ってるよ。
「もうムキになっちゃってぇ。無理してないで早く屋上いらっしゃいよ。」
「きもい。」
普通なら辛辣な、とでも形容すべきところの言葉でさえかわいく思えてくる。
これが愛なんだ。
俺は、改めて確信した。
やっぱりこれは渡さなきゃならない。
青い包みの折り目をするりと撫でた。
「頼む、少しの間だけだから。」
携帯の震えをじっと待った。
「もう来てるよ。」
震えは来なかった。
土方の声が聞こえた。
始業を告げるチャイムに重なって聞こえたそれは、青い空が言ったのではなかった。
扉の方を振り向くとまぶしそうに目を細めた土方が、本物の土方が立っていた。
「…なに、お前。」
「んだよ、てめぇが呼んだんだろうが。」
「いや、なんで来てんの。」
「だから、お前が呼んだんだろうがって。殺すぞ。」
まぁ、4限に出る気はねぇから、こんな風に俺を呼び出した事情。
ゆるゆるたのむわ、と言って土方は堂々煙草に火をつけた。
「じ、事情なんてたいしたものじゃねぇんだけど…。」
「……。」
緊張で湿った指先。
「あの、ほら…。」
チョコレート、と言いかけたとたん、急に土方は顔をゆがめた。
「え。」
ぽろり煙草を取り落とした。
「いや、だからチョコ…。」
「まさか。」
まさか、お前もあいつらと同じなのか。
きゅるりと俺をにらみあげた瞳。
何かにおびえるように真剣な表情。
「どういう意味?」
緊張しながらも浮かれていた、あの高揚した気分はそれのせいで一気に萎えた。
「……。」
高校生になってから、この時期になると家のポストに入ってんだ。
少し迷ってから土方は、俺との間に距離を保ったまま、話し始めた。
「誰からなのかはわからねぇが、例えばチョコと一緒に俺の写真と、寂しくなったら俺が愛してあげるから呼んでねとかって電話番号かいたメモ。」
「え。」
ずどん。
確かに耳の奥で、血の気が失せる音が聞こえた。
なんだって?
「他にも野郎のブツの形したチョコに、手作りだから頑張って食べてねとか。あとは…。」
「ちょ、ちょっと待って。」
もうやめろ。
これ以上聞いてたら俺はキレる。
確実にぶちギレる。
今だって精一杯深呼吸して、すーはーすーはー押さえ込んでんのに。
なんだって?
それってつまり、なんだ…すとーかー?みたいな?
いや、そんな。
「あ。」
目を回しそうになっている俺を尻目に土方が、指を鳴らした。
「でも、お前はこうしてここにいるよな。」
じゃあそれだけでもう、あいつらとは違うのか。
「お前には顔があるし。」
違うな、うん、と安心した風に頷いた。
そうだよ違うよ。
ここは安心するとこと違うよ、土方。
土方はすっかり緩んだ瞳で首をかしげた。
「でもじゃあなんで、お前がそんなもん俺に持ってくるんだ?」
「そ、それは…。」
お前が好きだから、なんて言えない。
こんな話聞いたあとに言えない。
そうだよ、やっぱり男が男に想いを寄せるってのはおかしいことなんだ。
こうして土方をおびえさせるようなことなんだ。
「それは。」
俺を見つめる透明な瞳。
「……?」
「あれ、いっぱい作りすぎたから、お前にもやろうと思って!俺が食うならもっと甘いのがいいし、な。」
ほら、やるよ。
昨夜、丁寧に丁寧に折り目をなぞった青色の包装紙。
巻き付いた麻ひもが緩やかな風になびいた。
土方は、ふぅんと言ってそれを手に取った。
「さんきゅ。」
「…お、おう。」
胸がきゅうんって縮みあがった。
ちょっと笑って言われただけで。
ちくしょう、結局また今年も勝ったとはいえねぇ。
でもこの笑顔があれば来年まで頑張れる。
そんな気がします。
ただその前に、俺には確認しなきゃならないことがある。
「そんじゃ俺は教室行くかな。」
なんだか切ない胸のうずきはなだめて、教室に戻らなければ。
「そうか、俺はこの時間終わるまでここに居るわ。」
「なんだよ、やっぱりサボり魔じゃねぇか。」
お前に言われたくねぇと土方は、新しい煙草に火を点けた。
青い包みを小脇に抱えて。
「それ、けっこう自信作だから。心して食えよ。」
「ん。了解。」
やっぱり笑ってそう言った。
やっぱりきゅうんと胸が鳴った。
俺は階段をかけ降りて、廊下を走って教室の後ろ側の引戸を開けた。
一斉に振り返る顔。
「銀時。」
「てめぇ、またサボりか!」
飛んできたチョークを避ける。
「すんません、高杉借りていきます。」
窓際一番うしろの席でやるき無さげに俺を見ていた高杉の、腕を掴んで引っ立てる。
「おいおい、勘弁してくれよ。」
呆れたように言うのを無視して教室からつきだした。
「お邪魔しやした!そんじゃどうぞ、授業を続けて下さいませ!!」
「こら、坂田!」
ぴしゃん。
扉の向こう側で先生が、まったくあいつはとかなんとか言っているのが聞こえた。
それよりも。
「高杉、聞きたいことがある。」
「…なんだ、土方なら戻ってきてないぞ。」
「そんなことはわかってる。」
二人して男子トイレのドアの陰にしゃがみこむ。
「これ、ほんとまじ他の奴に話したりしたらぶっ殺すけどいいか。」
「まぁ、俺に噂話の趣味はねぇ。あんまり。」
「ちっ。」
はりあいねぇなぁ。
「高校入ってから、土方の家のポストに、この時期になると変なもんが入ってるらしい。」
「変なもん?」
「なんか、多分、男、からの…嫌がらせみてぇなチョコ。しかもなんつーか、性的な意味で。」
「……。」
それまで膝に肘をついて俺の方を見ようともしなかった高杉が、すぅいっと目を細めてこちらを流し見た。
「へぇ、そんなことがなぁ。」
「おう。それで聞くんだけど、お前の仕業じゃねぇよな?」
「あったり前だ、なんで俺が。」
「うん、だと思った。」
「なら聞くなや。」
そこはまぁ、いちよう。
「それでお前、なんか心当たりとかねぇの?」
「心当たり、か。」
ないことはない。
唇の端を釣り上げて、楽しそうに高杉は言った。
「聞きてぇか?」
「じゃなきゃ何のためにお前を呼んだんだよ。」
「はは、ちげぇねぇ。」
くっくっくと、しばらく肩を震わせて、それから俺の耳に近付けた口で言った。
「そりゃぁ、お前のせいだよ。」
「……。」
俺のせい?
「どういうことよ。」
「高校入ってから、だろ。」
そこがミソだ。
人差指で目と目の間を指さされる。
かゆくなってぎゅっと眉を寄せた。
それを見て高杉はまた声をあげて笑った。
「お前が土方に近づきすぎるんだ。」
笑いの合間に絞り出されるように言われた言葉。
「近づきすぎる?」
「お前や、土方が、そういう性癖なんだと思われても仕方ねぇってことさ。」
実際、その道の奴らってのは相当鼻が効くらしいしよ。
「そういうのに理解の無い奴があたってるのかもしれねぇし、まぁ、ただあいつが好きとか嫌いとかいう奴の仕業かも知れねぇが。」
「……。」
俺のせい、と呟いてみた。
「俺のせいで土方が誤解される。」
おかしいのは俺なのに。
土方じゃないのに。
俺は一体どうすべきなのだろう。
「おい、銀時?」
「うん、聞いてる。」
なんとなく答えたが、当然、聞いてなんかいなかった。
今頃、もしかしたら俺があげたケーキを食べてるかもしれない土方を想っていた。
口に合うといいんだが。
・・・
つづく
・・・
なんとか間に合いました…(-_-;)
ただろくにプロットも立てずに書いたら収拾つかなくなっちゃったんで続きます。
今回、土方君が何を考えてるかわかんないための坂田君のあせりみたいなのが書きたかったので坂田君の一人称で書いていたのですが、やっぱり土方君の気持ちも書いてやりたいので、次回は多分、土方君の一人称です。
しかしイベントものなのに…。
計画性のなさを反省したいと思います。
ここまでお付き合いありがとうございました!!