銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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団子屋の前で道行く人を眺めている。
ある人を探している。
万事屋の旦那を、そのただ一人を探している。
土方のヤローのために。
夜の屯所でおもしれぇネタを拾った。
それを寝かして腐らせとくような馬鹿はいねぇ。
迂闊だよなァ山崎も、土方も。
そう俺は、アイツの困った顔が見たいんだアイツが取り乱す様を笑いてぇンだ。
せいぜい楽しませて下せぇよ、ってな。
中距離恋愛
「またサボリですか、沖田君。」
「また仕事ないんですかぃ、旦那」
あら、嫌だねぇこの子は。
と言って旦那は、当たり前のように俺の隣へ腰掛けた。
俺の予想通りに。
「親父、だんごー。」
「旦那、俺ぁ奢りやせんぜ。」
「わーってるよ。」
俺をなんだと思ってんだとかなんとか言うのを聞き流してその顔を覗き見る。
相変わらずやる気のなさそうな面だ。
「ねぇ、旦那。」
「うーん?」
旦那は首を伸ばして運ばれてくるお茶を待っている。
「面白い話をしやしょう、ね?」
「えー、ちょっと待って。」
立ち上がると店の奥に入って行った。
帰ってくる時には両手で大事そうに湯飲みを抱えていた。
「ねぇ、旦那。」
はいよー。
「ねぇ、旦那。」
ずずっとお茶をすする。
「面白い話。」
「面白い話?」
そこでやっと、旦那が俺を見た。ちらり。
ふふん、ほくそ笑んでみると、明らかに不審げな顔をされた。
「あんだよ。」
「面白い話ですってば。」
聞いてみたくはありやせんか?
「…まぁ、どうしてもって言うんなら聞いてやらんでもないけどよ。」
「ほいきた。聞いて下せぇ、どうしても。」
抱腹絶倒間違いなしですから!
俺にとっては。
扇子をぱらりと開く。
「あー、あれはいつのことだったっけねぇ…。」
「ん、そういうのいいから手短に頼むわ。」
へぃ、承りやした。
「それではいっちょ、手短に。」
「はい、どうぞ。」
「土方さんが旦那の事好きだって。」
「……。」
旦那は湯飲みをまた口につけたところでぴたり固まった。
一度、目玉をぐるりと巡らせた。
「…え?」
それからかすれた声を押しだす。
「え?」
「え?」
「え?」
ふたり並んで目は合わせないまま言い合う。
うん、想像とは違ったがなかなか良い反応だ。
引きつっている旦那の表情筋。
「……うそだろ。」
おもしろくねぇよ。
「ははは。」
「おもしろくねぇって!」
がばりと振り向いた旦那は今度こそまともに俺を睨みつけた。
自分でも、口の端が緩んでいくのが分かった。
それを見とめて旦那はでっかくため息をついた。
「お前さぁ…。」
「何ですか。」
もう、人をからかうのも大概になさいよ。
「……なんでぃ。」
からかってるわけじゃ、ありやせん別に。
と答えた声が、我ながらあからさまに拗ねているようで嫌だった。
「はぁ。」
「何ですか!」
「なんでもねぇよ。」
はぁ、とまた溜め息をついて旦那はそれからじっと黙っていた。
黙ってお茶を飲んでいた。
その間に団子が運ばれてきた。
「……。」
「……。」
だけど旦那は手をつけなかった。
「ほんとなの。」
「はい?」
「その話。」
ちらっ。
らしくない、こっちの顔色うかがうように、旦那が言った。
「気になる、んですかい?」
「そ、そりゃ。」
あんな奴に色目使われたらうるさくってしかたねぇだろ。
「ふーん。」
そのわずかに赤くなった旦那の目元を見ながら思った。
どうやらこれは、少々俺の読みが甘かったようだ。
どうも、土方の完全な独り相撲という訳じゃぁ、ねぇらしい。
「なんですか!」
「いぃえぇ。」
あぁこれは、からかってることになるのかな。
楽しんでる、もんなぁ俺。
「教えやせんよ、俺は。」
「はぁ?」
「ほんとかうそかはどうぞ、ご自分でお確かめになって下せぇ。」
はぁ?
「秘密、でさぁ。」
「…お、おまっ。」
からかてんだろ、絶対!
「からかってるわけじゃ、ありやせん別に。」
こんどは余裕綽々、笑顔で言い切る。
「はいはい左様でございますか。」
旦那は眉間にしわを寄せながらついに団子を手に取ると、一気に頬張った。
やけ食いみてぇに。
「詰まらせますぜ。」
「ふゅっへぇ。」
あぁ、まずい笑っちまいそうだ。
ここで笑ったらきっと殴られる、絶対殴られる。
「ねぇ、旦那。」
「あん?」
ここはぐっとこらえて。
「今度、真選組から万事屋に仕事をまわします。」
「…それで?」
チャンスですよ!
「いや、何のっ!?」
「ぶっ。」
いや、もう我慢できないこれは無理。
「あはっは、ひーっくっくっくっく。」
「おま、からかってんだろ絶対!!」
スパン、頭を叩かれた。
けど一度吹き出したら笑いが止まらなくて、仕方がないので退散する事にする。
「じゃぁ旦那、俺はそろそろ。」
団子を一本、かすめ取って立ち上がる。
そろそろ帰りますけど、また連絡しますから。
「頑張って下せぇよ!」
「だから何をっ!?」
罵声を背中に駆けだして、あぁなんだかスキップでもできそうな気分。
この俺のまいた種がどんな風に芽吹くか楽しみだ。
・・・
つづく
・・・
あと二話で終わります。
42巻の所為で原作設定がなんとなく書きづらいんですが、下書きはできてるんで開き直っていこうと思います!
ある人を探している。
万事屋の旦那を、そのただ一人を探している。
土方のヤローのために。
夜の屯所でおもしれぇネタを拾った。
それを寝かして腐らせとくような馬鹿はいねぇ。
迂闊だよなァ山崎も、土方も。
そう俺は、アイツの困った顔が見たいんだアイツが取り乱す様を笑いてぇンだ。
せいぜい楽しませて下せぇよ、ってな。
中距離恋愛
「またサボリですか、沖田君。」
「また仕事ないんですかぃ、旦那」
あら、嫌だねぇこの子は。
と言って旦那は、当たり前のように俺の隣へ腰掛けた。
俺の予想通りに。
「親父、だんごー。」
「旦那、俺ぁ奢りやせんぜ。」
「わーってるよ。」
俺をなんだと思ってんだとかなんとか言うのを聞き流してその顔を覗き見る。
相変わらずやる気のなさそうな面だ。
「ねぇ、旦那。」
「うーん?」
旦那は首を伸ばして運ばれてくるお茶を待っている。
「面白い話をしやしょう、ね?」
「えー、ちょっと待って。」
立ち上がると店の奥に入って行った。
帰ってくる時には両手で大事そうに湯飲みを抱えていた。
「ねぇ、旦那。」
はいよー。
「ねぇ、旦那。」
ずずっとお茶をすする。
「面白い話。」
「面白い話?」
そこでやっと、旦那が俺を見た。ちらり。
ふふん、ほくそ笑んでみると、明らかに不審げな顔をされた。
「あんだよ。」
「面白い話ですってば。」
聞いてみたくはありやせんか?
「…まぁ、どうしてもって言うんなら聞いてやらんでもないけどよ。」
「ほいきた。聞いて下せぇ、どうしても。」
抱腹絶倒間違いなしですから!
俺にとっては。
扇子をぱらりと開く。
「あー、あれはいつのことだったっけねぇ…。」
「ん、そういうのいいから手短に頼むわ。」
へぃ、承りやした。
「それではいっちょ、手短に。」
「はい、どうぞ。」
「土方さんが旦那の事好きだって。」
「……。」
旦那は湯飲みをまた口につけたところでぴたり固まった。
一度、目玉をぐるりと巡らせた。
「…え?」
それからかすれた声を押しだす。
「え?」
「え?」
「え?」
ふたり並んで目は合わせないまま言い合う。
うん、想像とは違ったがなかなか良い反応だ。
引きつっている旦那の表情筋。
「……うそだろ。」
おもしろくねぇよ。
「ははは。」
「おもしろくねぇって!」
がばりと振り向いた旦那は今度こそまともに俺を睨みつけた。
自分でも、口の端が緩んでいくのが分かった。
それを見とめて旦那はでっかくため息をついた。
「お前さぁ…。」
「何ですか。」
もう、人をからかうのも大概になさいよ。
「……なんでぃ。」
からかってるわけじゃ、ありやせん別に。
と答えた声が、我ながらあからさまに拗ねているようで嫌だった。
「はぁ。」
「何ですか!」
「なんでもねぇよ。」
はぁ、とまた溜め息をついて旦那はそれからじっと黙っていた。
黙ってお茶を飲んでいた。
その間に団子が運ばれてきた。
「……。」
「……。」
だけど旦那は手をつけなかった。
「ほんとなの。」
「はい?」
「その話。」
ちらっ。
らしくない、こっちの顔色うかがうように、旦那が言った。
「気になる、んですかい?」
「そ、そりゃ。」
あんな奴に色目使われたらうるさくってしかたねぇだろ。
「ふーん。」
そのわずかに赤くなった旦那の目元を見ながら思った。
どうやらこれは、少々俺の読みが甘かったようだ。
どうも、土方の完全な独り相撲という訳じゃぁ、ねぇらしい。
「なんですか!」
「いぃえぇ。」
あぁこれは、からかってることになるのかな。
楽しんでる、もんなぁ俺。
「教えやせんよ、俺は。」
「はぁ?」
「ほんとかうそかはどうぞ、ご自分でお確かめになって下せぇ。」
はぁ?
「秘密、でさぁ。」
「…お、おまっ。」
からかてんだろ、絶対!
「からかってるわけじゃ、ありやせん別に。」
こんどは余裕綽々、笑顔で言い切る。
「はいはい左様でございますか。」
旦那は眉間にしわを寄せながらついに団子を手に取ると、一気に頬張った。
やけ食いみてぇに。
「詰まらせますぜ。」
「ふゅっへぇ。」
あぁ、まずい笑っちまいそうだ。
ここで笑ったらきっと殴られる、絶対殴られる。
「ねぇ、旦那。」
「あん?」
ここはぐっとこらえて。
「今度、真選組から万事屋に仕事をまわします。」
「…それで?」
チャンスですよ!
「いや、何のっ!?」
「ぶっ。」
いや、もう我慢できないこれは無理。
「あはっは、ひーっくっくっくっく。」
「おま、からかってんだろ絶対!!」
スパン、頭を叩かれた。
けど一度吹き出したら笑いが止まらなくて、仕方がないので退散する事にする。
「じゃぁ旦那、俺はそろそろ。」
団子を一本、かすめ取って立ち上がる。
そろそろ帰りますけど、また連絡しますから。
「頑張って下せぇよ!」
「だから何をっ!?」
罵声を背中に駆けだして、あぁなんだかスキップでもできそうな気分。
この俺のまいた種がどんな風に芽吹くか楽しみだ。
・・・
つづく
・・・
あと二話で終わります。
42巻の所為で原作設定がなんとなく書きづらいんですが、下書きはできてるんで開き直っていこうと思います!
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