銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ホコリ臭い国語科準備室。
そこには机とキャスター付きの椅子、ちっさいソファが2台にたくさんの本棚。
本棚の中には数えきれないくらいの本。
散らかった机の上にはペン、鉛筆、紙、消しゴム(とそのカス)、教科書、ジャンプ、眼鏡。
そしてさらにその上に。
押し倒されて俺が居る。
背中が痛い世界
「なァ、先生。」
「んー?なぁに。」
眼鏡を取った先生の目が、俺の耳の辺りを見降ろす。
机に乗っていない俺の、脚の間に立って。
俺は先生の、影になった喉仏を見ながら続けた。
「これが仮定な。」
「うん。」
1番。
「宇宙人が居るとします。」
2番。
「その宇宙人には時間という概念が無い事とします。」
その宇宙人はいったい何を思って生きているんでしょうか。
「それって、今考えなきゃだめ?」
「はい。」
「うそーー、萎えるーぅ。」
そう言いながらも先生は、机に押し付けた俺の手を放した。
それからソファに座って、煙草に火をつけた。
一瞬伏せられるまぶた。
「はい、じゃぁこっちおいで。」
ちらりとひらめいて、今度は机に腰掛けた俺を見上げる。
俺はソファの、先生の隣に座った。
煙草から立ち上るケムリ。
「考えてみよう。」
それを先生の吐き出すケムリが追いかける。
手持無沙汰に握った手を取られる。
「時間という概念を持たない宇宙人は、はたして何かを考え得るのだろうか。」
一本一本指を撫でて行くまた別の指が絡んで離れてまた撫でて離れて行く。
ぼんやりそれを数えながら、
「つまり?」
「つまり俺達人間は、時間の中に居るからこそものを考えられるのではないか、ということだ。」
「おもしろいな、どういう意味だ。」
先生が、俺の肩を引き寄せた。
俺はなんだかいたたまれなくなって、先生の煙草をつまむ手を見つめた。
中指の爪が割れかけている。
「人は皆、今起きてる事を今考えている訳じゃないと思うんだ。
その時起きた現象について考え始めた時点でその起きた事っていうのはもう過去のものになってんだよ。」
「なるほど、…それで?」
「時間を持たない宇宙人にそれが可能だろうか。
例えば、さっきこいつが言った事はこの前あいつが言った事に似ている、とか
そんなレベルのものでさえ思い浮かべることはできないんじゃないか?」
「何も考えられないまま、時間も知らないまま、何をやってんだろう。」
そーだねー。
「そもそもそれじゃぁ、生きてるともいえないんじゃないかな。」
「植物みたいなもんか…?」
「うん、そーかもね。」
「なんだ、つまんねぇな。」
仮定が悪かったのかもしれないよ、と言いながら先生は煙草を消した。
あ、なんか。
先生が。
先生が宇宙人だったらどうしよう。」
と、思っていたら先生がこっちを向いて笑った。
揺れる、揺れた赤みがかった瞳。
「俺が宇宙人だったらどうする?」
「……。」
いやだいやだ、なんかいやだ。
「やめて下さい。」
先生が宇宙人だったとしてもきっと俺は、それでもここに居たいって考えるんだ。
きっと俺は。
「ごめん。」
先生の手が俺の頭を撫でた。
まるで俺の考えてた事、全部わかってる様な大人ぶった仕草。
眉をひそめてもはぐらかす様に近付く笑顔がにくらしい。
結局俺が、この人に追いつく事なんて無いんだ。
「はい、ちゅー。」
「ん。」
ひそめた眉はそのままに、目だけは閉じて口づける。
スプリングのきかないソファの縫い目が、押し倒された背中に当たっていた。
先生の指が俺の前髪をかきあげる。
割れかけた爪。
はっかかるかもしれない、と思った。
あぁ、なんて。
背中が痛い
世界。
PR
アーカイブ
カウンター
ブログ内検索