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銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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(高土)

微妙に過去捏造。

死にネタ注意。題名との関連性が謎…。


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The Last Judgment



いつだって終わりはあっけないもんだ。

誰だって知ってる。



それはいつもとなんの変わりも無い昼下がり。

両手はポケット、銜え煙草に仏頂面、腰には刀をぶら下げて。

毎度おなじみの事ながら姿を消した総悟を、目の端で探しながら歩く。

そうだ。

まるでいつもとなんの変わりも無い市中廻り。

今にも雨を降らしそうな天気は前髪を額に張り付かせて、心なしか煙草さえしおれてる様に見える。

嫌な予感がしたのは視界に緋色の着物をとらえた時。

俺には、それが高杉晋助だってことがすぐにわかった。

天気の所為か、いつにも増して暗い路地。

眉をひそめて後ろ姿を追えば異変に気付く。

高杉は、まるで身体を引きずるように歩いていた。

時々その肩が不自然に揺れる。

屯所に連絡を入れようかとまよった。

馬鹿な事。

アイツが俺の事を覚えてる訳も無いのに。



「高杉。」

連絡は、しなかった。


今更言い訳もしねぇが、裏切りみたいなもんで、それでも足を速めた。

名前を呼んで掴んだ右手が、怖いくらいに細くなっていた。

振り返った口元には、血がにじんでいた。

「土方…。」

高杉は目を細めて言うと、そのままずるずると座り込んだ。

「高杉っ。」

俺は膝をついて、高杉のかすかに血が飛んだ頬に触れた。

想像した何倍も冷たかった。

「どうしたんだよ。」

「あぁ……。」

聞いているのか居ないのか、それさえも曖昧だった。

くすんだ片目が俺を見上げて、歪んだ。

おかしなことに、お互い刀には手を触れていなかった。

「とーしろっ。」

細い腕が伸びて、首にまわされた。

「お前、その呼び方…。」

揺れる陽炎が頭に中に浮かんで、消える。

高杉は、こいつは忘れているだろうと思っていた記憶のかけらが。

「なぁ、覚えてるか。」

高杉の、俺にしがみ付いてる所為でくぐもった声が言った。

「俺は血に濡れて、今みたいに立つこともできず、それで死ぬのを待ってた…。」

何年だか前の話だ。

俺がまだ真選組副長じゃなくて、こいつもまだテロリストなんて呼ばれなかった時代。

「そしたらお前が通り掛かった。

 今みたいにしゃがんで、俺の頬に触れて、両目を覗き込んだ。」

それでどうしたんだっけ、と高杉が聞いた。

「お前どこから来たんだよ、って聞いた。」

「あぁ、そうだ。

 俺の仕事は薬屋だから、薬やるのが仕事だっつって。」

高杉が笑ったのがわかった。

それから激しく咳き込む音が。

血の匂いがした。

胸元が濡れるのを感じて、俺はぼんやりこいつは死ぬのかもしれない、と考えた。

「まるで身内が死にかけてるみたいにつきっきりで看病なんかして。」

「誰だってそうする。」

片目をひらめかせるこいつの写真を見た時から、ずっと渦巻いていた記憶が浮かび上がってきていた。

「お前、何で俺なんか助けたんだろうな。」

「俺にもわかんねぇ。」

こんなことになるなら、あの時見殺しにしておけば良かったんだろうか。

今となってはどうしようもない話だけど。

「俺、まだあそこの土の感触まで覚えてるんだぜ。」

なんだか得意げに言うもんだから、ちょっと笑えた。

「そりゃ、すげぇな。」

俺は、あんたの両目を覚えてるよ。

また高杉の肩がふるえた。

「なぁ、とーしろ。」

力の抜けた身体の表情はわからない。

「また、あそこに戻りてぇな。」

「なに、弱気な事言ってんだよテロリスト。」

またあそこに座り込んで、お前が来るのを待ってんの。

「馬鹿。」

高杉は、俺を待ってたんだろうか。

この暗い路地で、真選組副長である俺を?

「いいじゃねぇか、別に。」

今くらいは、馬鹿でいさせてくれよ。

首にまわされた手が、うなじの辺りをなぞって、俺は目を細めた。

高杉が顔をあげて、あぁキスされんだと思った。

目を閉じて触れた唇は、やっぱり冷たくて、むっとするような血の味がした。

俺はそんなんに夢中になって、高杉の背に手を伸ばした。

あぁそういえば、血を吐いてたんだった。

結核かな、うつるんだろうか。

そんな疑問も無視して、高杉の腰が抜けるようなキスに溺れた。

「は、ぁ…。」

名残惜しげに離れた唇は、曇った視界の中でそっと囁いた。

「………………。」

殺せ。



涙が後から後から流れた。

みっともねぇ、高杉はそれを切なそうに見て俺の涙に濡れた頬をそっと撫でた。

俺は震える手で刀を抜いた。

高杉の左胸に切っ先を当てて。

刀に縋りつくみたく力を込めて。

それは深々と高杉を刺し貫いて。



うそみたいにあっけない。

「あ…あ、ああぁぁぁっ!!」

死を目前に微笑んだ顔が、真っ暗なまぶたの裏をちらついた。



そうだ。

なんてあっけない終わりなんだろう。


 




・・・




 

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