銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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「そういえば土方さん、聞きました?」
「あ?」
何をだ。
「万事屋の旦那がへまやらかして大怪我したそうです。」
「……ふーぅん。」
だってしかたないの
いつにも増してけだるい午後だった。
天気は曇り、じっとりと湿気が纏わりつく。
そんな中土方は、自室で書類と格闘していた。
背後には沖田が転がっている。
「ねぇ土方さん。」
「なんだ。」
「あんたの事だからもう聞いてるんでしょうけど、旦那が怪我したそうですね。」
「……。」
沖田の所からは、ぴくりと揺れる土方の肩がよく見えた。
「…らしいな。」
間をおいて聞こえたいかにも気のなさそうに装った返事に、沖田は笑みを深めた。
きっとこの人はまだ俺が気付いてねぇと思ってるんだ。
馬鹿な人だ、いつまでも俺を子供だと思って。
旦那とあんたの間にただならねぇものがある事くらい、すぐわかるってーの。
ひた隠しにしてるもんだから、決定的な場面に出くわしたこたぁねぇが。
「わかりやすすぎ。」
「…なんか言ったか。」
「いいえ、なぁんにも。ついに補聴器がいるのか土方ァ。」
「うるせぇ。」
しかし土方はわかっていた。
そりゃそうだ、総悟が俺の弱みになるもん見逃すはずがねぇ。
鬼の副長だなんだ言われてる俺が男と付き合ってるだぁ、まぁ面白いネタになるだろう。
それをダシに俺押しのけて副長の座に昇ろうって腹か、そうはいくか。
と、そうして隙は作ってこなかったつもりだった。
万事屋との関係について、総悟は外から見守るしか無かったって事だ。
少なくとも今まではそうだったんだが、このザマだ。
手が、震えている。
山崎からもさっき聞いて、わかってるはずだったのに。
総悟のヤロー、ついにしかけてきやがった。
「ねぇ、土方さん。」
「なんだよ。」
「旦那はね、大江戸病院に担ぎ込まれてるそうでさァ。」
「……。」
「心配なら、今から見に行ってきたらどうですかィ?後はやっておきます。」
「……。」
試されている。
俺があいつを選ぶか、真選組を選ぶか。
そんなん答えは決まってる、俺が真選組を選ばない訳ねぇじゃねぇか。
「仕事しろよ。」
ただ。
手が震える。
あいつが、銀時がちょっとやそっとのことじゃ死なねぇってのはわかってる。
でもあいつは、一度守ると決めた奴は死んでも守ろうと、する奴なんだ。
それも知ってるんだ。
あいつ自身は俺は死なねぇ、何て言ってるが。
いつ死んでもおかしくないようなとこに身を置いてるのも確かで。
なんかあったって俺に言って来る訳じゃねぇし。
まぁそれは俺も同じと言えばそうなんだけど。
そのくせあいつは俺がちょっと怪我しただけでもわいわい騒ぎたてるし。
俺が隠すのも悪いんだが、お前は俺のものだとか無理な理屈ならべて。
お前に人の事言う資格はねー!
チクショウ、心配するじゃねぇか。
「……。」
背中に総悟の視線を感じる。
「…お前いい加減でてけや。」
「俺は邪魔ですかィ。」
「誰もそんなこと言っちゃいねぇよ。」
クソガキ。
「お前がそこに居ると集中できねぇの。いつまでも仕事が終わらないの。」
向き直って言うと、総悟はしぶしぶ立ち上がった。
「俺の気配ごときで集中きれるたァ、あんたもそろそろ終いだねェ。」
「やかましい。」
スパンと襖が閉まる。
あーぁ、これで仕事が終わるまで俺はなんもできねぇことになった。
総悟の思うつぼだ。
「それとも形振りかまわずあいつのトコ行けってか。」
そりゃ、そうしたい気持ちもある。
でもやっぱり、真選組をすてることはできねぇ。
きっと死ぬまで、永遠に。
それはしかたない、習性みたいなもんだからすでに。
「さてと。」
この書類片付けたら山崎を呼ぼう。
後始末は任せて、ちょっと万事屋に行ってみよう。
居なかったらどうしようか、病院行くか?
…いや。
きっと行かない方がいいだろう。
俺があいつに怪我した事知られたくねぇのと一緒だ。
あいつも嫌がるだろ、弱ってるとこ俺になんか見られたくねぇだろ。
はっ、素直じゃねェの。
俺も人の事言えねぇが、あぁ、そうだ。
怪我が治ったころに行ってみようか。
せいぜい嘲笑ってやるよ、こんだけ心配させてんだ。
それくらいやってもいいだろ。
うん、せっかくだからあいつの好きなもん、買って行ってやろうかな。
そんで目の前で食ってやる、覚悟しとけ!
覚悟して、ちゃんと治して待ってろよ。
ペンを握り直して書類に目を落とした。
・ ・ ・
やっぱり心配。
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