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銀魂(土方受)二次創作中心に小説。BL・流血表現等あり。嫌悪感を抱かれる方にはUターンがお勧め。
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(沖→土→近)

なまぬるい雰囲気小説です。

近藤さんの扱いがあまりよろしくありません。


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ひくりひくり。
 
涙の流れる音がする。
 
 
ひくりひくり。
 
淀んだ水の、溜まっている音。


                                 夜の季節

 
死んでいるのかと思った。
 
なんてことはない夜の三時は、雨の音で目が覚めて。

便所ついでに土方を。

困らせてやろうかと通り掛かった副長室。

細く開いた障子の隙間から、覗き込んだ部屋の中で。

ひくりと動かねぇ土方の、涙の流れる音がする。

沖田は思わず息を止めた。

「…………総悟か。」

乾燥している(様に見える)薄い唇から吐き出された声には、溜め息よりもずっと深い。

悲しみと、苦しみと、迷いと、諦めが含まれていた。

「土方さん。」

真っ黒い着流しが、乱雑にその体を覆っている。

帯は締めていない。

血の気の失せた肌が、暗闇の中で浮き出て見えた。

沖田は、手をかけていた障子をそっと開いた。

静閑としていた部屋の中に、雨の音が入り込む。

土方はひどくだるそうに、時々ゆたりとまばたきをした。

沖田の方は、見なかった。

湿った畳に座りこんで、部屋の隅をぼんやり見つめるその瞳が。

ひくりひくり、涙を流す。

「土方さん。」

いたずらしてやるような元気はとっくにどっかに行っちゃって。

心配とも違うけど。

こんな、こんな土方さんはやだ、こんなになった土方さんは。

「どうしたんですか。」

「…………煙草。」

え?

「煙草、取って。」

土方は言いながら身じろいで、うろん気に沖田を見上げた。

柄にもなく慌てて部屋を見渡せば、入口のそばにマルボロのケース。

拾い上げて差し出す。

「ライター。」

「はい。」

手慣れたしぐさで火をつける土方の目元は、もう乾き始めていた。

沖田の理解を必要としないままに、非日常は日常へ戻ろうとしている。

「土方さん。」

「なんだ。」

何があったのか、聞きたいんでさァ。

「…………。」

土方と同じように座り込んだ沖田の目を、そのわずかに充血した目が見やる。

「お前には。」

関係ねぇ。

「…………。」

それだけ言うと土方は、煙草を消して立ち上がった。

一瞬ふらつく。

舌打ち。

何があったのか、聞きたいんだけど。

「帯。」

「俺はあんたの母ちゃんじゃありやせん。」

だけどそれでも手渡してやる。

なんでもないように、見ない振りをしている。

土方は、その帯をまたおざなりに巻いて、沖田の前を通り過ぎた。

「どこ行くんですか。」

「風呂。」

風呂……、ねぇ…。

土方は、沖田の視線を背中に感じながら部屋を出た。

そのくるぶしの下に浮き出た青色の血管が、沖田のまぶたの裏に残った。

雨の音がそれをごまかす様に騒ぎ立て始める。

雨は部屋の中にまで吹き込んできた。

「チクショウ、土方。襖、閉めてけよ…。」

沖田はゆっくり立ち上がって障子を閉めると、そのまま横になった。

障子紙に打ち付けた雨のシミを見つめる。

土方さんは今、何考えてるんだろう。

わかんねぇなぁ。

そうして目をつむって意識の扉を閉じる。

 

土方は、縁側に叩きつける雨に足元を濡らしながら歩いていた。

乱雑に結んだ帯の端が、時々ぱたりと揺れる。

俺ぁ別にただの人形でいてぇわけじゃない。

歩きながら考える。

誰にだって意志はあるもんだし、俺はそれが人一倍強ぇってのも自覚してる。

それを忘れられるあの人は無神経なのか。

それとも全部わかった上でやってんだろうか。

忘れたふりをしてるだけなんだろうか。

俺があの人に逆らえねぇってことだとか。

あの人を切り捨てられねぇってことだとか、そういうのも全部。

それって最低なんじゃねぇのか。

だとしたら俺は、あんたを見誤ったって事なのか。

違うのか?

それも全部受け入れた上であんたを選んだってことなのか。

チクショウ。

土方はしゃがみこんで縁側の板が微妙に浮いているところを睨みつけた。

俺はあんたのセフレじゃねぇってんだよ。

やっていい事と悪い事があるだろうが、なぁ。

それなのに。

そう思うのにあんたに見捨てられるのが怖いなんて俺はどうかしてんのか。

そうなのか?

 

なぁ、近藤さん。

 
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